4月8日公開
民話のように生々しく素で哀しい物語。
1900年代初頭イタリアの、宗教と風習が息づいている地方を舞台に、初めての子を死産した若い娘の旅路を描く。
白いベールで覆われたアガタ(セレステ・セスカティ)を、村人が囲み、その手に傷をつけ、入水させる儀式で始まる。彼らの低い歌声につれ、当時のその地へと引き込まれる。
そんな地で起こる死産という悲劇、その運命に抗うように、アガタは産後の床に伏している間に埋められた我が子を掘り起こし、その亡骸とともに希望の地へと旅に出る。亡き我が子が冥界をさまようことのないよう、一瞬だけ命を吹き込み名を授け洗礼できるという噂がある秘密の地へと向かうのだ。
だが、旅は厳しい。険しい山道、寒さ、女性は通れないと言われる難所、さらには、小さな木箱を大事そうに抱えた若い娘を、だまそうとする者まで現れる。
凛としたセレステの佇まいが、物語に説得力を持たせている。荒れた地、冬景色が、寂しくも美しい。
ローラ・サマニ監督の印象的な長編デビュー作。