2月23日公開予定 役所広司がカンヌ男優賞受賞のヴィム・ヴェンダース監督作。
古びたアパートで一人暮らす、公共トイレ清掃員が主人公(役所)。毎朝、布団をたたみ、和室の一角にきっちり重ね、身支度を整え、アパート下の自販機で缶コーヒーを買い、掃除道具を積んだ車で昔ながらのカセットテープを聞きながら仕事に向かう。ランチ休憩には木々に囲まれたお気に入りベンチでサンドイッチを食べながら、空と木を見上げ、写真を撮る。家では写真の整理と、苗木を植えた鉢の世話もする。夜には、敷いた布団の中で、就寝まで古本屋で買った本を読む。
清貧という言葉が浮かぶ暮らしぶり。ZEN(禅)と表現するものもある。だが、ストイックな修行をしているわけでも、孤立しているわけでもない。会計ついでに、お買い上げ本やその作家について毎回鋭い解説を入れる古本屋のおばちゃんに、注文を聞かずともいつものドリンクを「おっつかれさん!」の言葉とともに運んでくる大衆酒場のおにいちゃんと、顔見知りもいる。
判で押したような毎日だが、突然転がり込んでくる姪っ子など、ちょっとした波風は立つ。そこから、過去に何かあったらしいことが匂わされる。そんなあれこれの後には、より一層、小さな楽しみで満たさる、ささやかな人生万歳と思える。
タイトルは、主人王が聞くカセットの一曲で、ルー・リードの代表作。映画祭試写での英語字幕版では、エンドロールでKOMOREBIという言葉と意味が紹介された。確かに木漏れ日のシーンが印象的な映画だが、やや唐突と思ったら、タイトル案にKOMOREBIもあったらしい。なるほど、人生とは木陰の中、時にきらめく木漏れ日を慈しむものとも言えそうだ。
公式サイトhttps://neonrated.com/films/perfect-days
※これまでのご紹介映画はこちら