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Nitram

July 1, 2022 - Film of the month
Nitram

7月1日公開 ポート・アーサー事件が起こる直前までを映画化。

無差別殺人のような理不尽な事件が起こった時、まず浮かぶのは、何故?だろう。

1996年4月28日(日曜)、オーストラリアの観光地、タスマニア島ポート・アーサーで、死者35人を出した無差別乱射事件への、何故?に応えるのがこの映画だ。

犯人は28歳だったマーティン・ブライアントで、彼が嫌っていたあだ名がNitram(二トラム)、Martinを逆にしてバカにするものだ。

バカ扱いされたのは、バカな行動があったからだ。例えば、花火で乱暴な遊びをして怪我をするマーティンは、無邪気というには度を越している。知的障害とメンタルの障害もあったらしい。

その息子を導いているようで、冷たいようでもある母、ヘルプしているようで、甘やかしているようでもある父、ひょんなことからマーティンに財力を与えることになる女性、それがある種の崩壊を迎えて、あの大事件へとつながっていく。

マーティンの抱えていたであろう孤独と鬱屈が、沸点に達していく過程は共感できずとも理解可能だ。実際の事件がこの通りだったかはわからないにしろ、少なくともジャスティン・カーゼル監督の何故?への応えはよくわかる。

カーゼル監督と言えば、長編監督デビュー作スノータウン(2011)が衝撃だった。赤の他人に支配された家族が、閉じた家族内で殺し合う、やはりオーストラリアで実際に起きた事件の映画化だ。そちらも、そこまで追いつめられる心の動きが納得できるほどに描かれていた。 それを観てから、日本の似たような事件も、洋の東西を問わず、人間は奥の所では同じ、起こりうるのだと思った。

さて、今回の主演は、美形だがちょっと癖のある顔立ちのケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、これこそはまり役という二トラムで、カンヌ男優賞を獲得した。

公式サイトhttps://www.ifcfilms.com/films/nitram