公式サイトhttps://www.citizenkfilm.com/
Citizen K
12月13日公開
アレックス・ギブニー監督が、ミハイル・ホドロフスキーと、プーチンのロシアをとらえたドキュメンタリー。
ギブニー監督は、優れたドキュメンタリーでオスカーはじめ様々な映画賞を受賞してきた。そのギブニー監督が今回、対象として選んだのが、大富豪にして元囚人のホドロフスキー。
ホドロフスキーの半生は、良く知られた事実だけ並べてもドラマチックだ。
共産主義のソビエト連邦から自由経済のロシアに移行する頃、銀行家として財を成し、それから興した石油会社でも成功、ロシアの富のほとんどを握っていた7人のうちの1人になる。そして、この7人の新興財閥はロシア政府と癒着していた。
だが、そこから転落する。脱税の罪に問われ、10年を獄中で過ごした後、ソチ五輪時の恩赦で刑を解かれた。
そもそもが政府と癒着していたのだから、叩けば埃も出るだろう。叩かれたのは、プーチン大統領を批判したからだ。そのプーチンが「彼には病気の母もいる」なんて人情味大アピールで恩赦したところ、すぐさま、その母もろともドイツに飛んだ。
そして今、プーチンが司法ばかりかマスコミも握るロシアでは、ホドロフスキーはある殺人事件の真犯人とされている。
写真は、現在はロンドンに移り住んでいるホドロフスキー(左)が、ギブニー監督(右)とともにロンドン映画祭での上映後Q&Aで登壇したところ。
ホドロフスキーの受け答えは映画中と同じく、端的にポイントを突く。
政府と癒着していたことは「間違っていたのは、ほんとうの民主主義が立ち上がる前に必要な経過と考えたことです。私たちは、そのつけを払わなければいけない。私は払っています」というホドロフスキーはブレグジットにも容赦ない。
プーチンの民族主義が、ブレグジットに直面しているイギリスほか民族主義的になりつつある世界の責めを負うべきではと問われると「いいえ、ブレグジットは全てあなた方が負うべきものです」とけんもほろろ。
イギリスがロシアの民主化を助けられるかについては「私たちは西洋を例として見ることはできます。80年代には西洋は明確な例でした。現在の西洋には民主主義の崩壊が見えます。それを乗り越え、また明確な例となってくれることを望みます。それが、あなた方ができる最善のことと思います」とずばり。
カリスマのある人物だが、それを打ち消して国外逃亡中の殺人犯みたいに思わせることに成功しているプーチンのパワーが上ということか。