
11月7日公開予定 ピューリッツァー賞候補となったデニス・ジョンソンの同名小説をクリント・ベントレー監督ジョエル・エドガートン主演で
20世紀初頭のアメリカに生きたある男の生涯。
正確な生年月日さえわからない孤児だった男は、森の伐採で暮らす。妻を得て、ようやく彼のほんとうの人生が始まるかに思えたが…
子ども時代と晩年はナレーションで、主に描かれるのは青年期から壮年期だ。優しくしっかり者の美しい妻(フェリシティ・ジョーンズ)との間に娘も生まれるが、仕事が入れば現場暮らし、家族と暮らせる時間はわずかだ。そして、その暮らしさえ、長くは続かない。
きつい肉体労働に従事する男と、家庭を守る女、どちらも精一杯生きているが、その先にあったのは不運としか言いようのない運命だ。
言葉少なに、ひたすら働き、家族への希望を持ち続ける男を演じるエドガートンがいい。
報われることの少ない働きづめの人生ということで、柳美里の小説JR上野駅公園口を思い出した。とはいえ、まるで雰囲気の違う物語で、読後に号泣した柳の小説に比べると、しみじみと生涯を振り返り、満足感とは言わずとも生き切った感のある映画だ。
荒涼とした土地を、勝手に切り開いて、家を建てて暮らす当時のアメリカと、勝手に住むのは同じでも、警察の目を避けてのテント暮らしとなる現代日本のホームレス。時代と場所の違いだろうか。
見終えた後の、主人公の人生を称えたくなる、ポジティブとも言える印象が、ベントレー監督によるものか、ジョンソン原作もそうなのか、読んでみたくなった。
7日に英一部劇場公開となるトレイン・ドリームズ、21日にはNetflixから世界配信。
